第25章 罠
城の奥まった一室に入れられた私は、表面上は丁重に扱われていたが、実際のところは軟禁状態だった。
部屋の前には見張りの者が置かれ、常に監視の目に晒されて、外部とは連絡が取れない。
(どうしよう…家康はあの後どうしただろう。
まだ小田原に残ってくれているだろうか…
何とか連絡を取りたいけど、このままでは…)
兄から告げられた言葉は予想だにしないものだった。
(父上や母上はご無事なのだろうか。
兄上は私をどうするつもりなんだろうか……)
兄に触れられた感触が蘇り、肌が粟立つ。
兄とは、母が違うせいで小さい頃もそれほど交流はなく、たまに会っても親しく話しかけられたことはなかった。
ただいつも上から下までじっとりと舐めるような目線で見られることが多く、正直苦手な人だった。
(兄上が私をあんな風に思ってたなんて…
信長様以外の人に触れられたくないっ。
次に触れられたら………)
懐に忍ばせた懐剣を震える手でぎゅっと握り締めた。