第25章 罠
「くっ、信長に抱かれて女になったか?
……あの男に触れられて、お前はどんな声で啼くのだ?」
狂気じみた目で全身を舐めるように見られ、着物越しに身体を撫でられる。
「っ、いやっ…やめて下さい!
兄上…我らは兄妹ですよ??」
「くくっ、お前を妹と思ったことはない。
信長がお前を安土に連れて行ったと知った時、気が狂いそうだったぞ。
それを許した父上のことも腹立たしかったわ。
朱里、ようやくお前を俺のものにできる。
これから、じっくり可愛がってやる」
欲を宿した顔が近づき、首筋の紅い痕の上を兄の唇がかすめる。
「っ、いやぁ」
着物の袷に手が掛かり、乱暴に開かれた、その時…
「殿、ご家老様たちがお集まりです。広間にお越し下さい」
部屋の外から兄を呼ぶ声が聞こえ、兄の手が止まった。
「ちっ、好いところで邪魔が入ったか。
まぁ、いい。時間はたっぷりある…なぁ、朱里」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて自分を見る兄の姿に、恐怖と絶望を感じて立っていられなくなり、その場にずるずると崩折れた。
(怖い…信長様…助けて)