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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第115章 紀州動乱


ーカシャンっ!
ーパラパラパラッ…

「ああっ…」

手の内からつるりと滑り落ちた玻璃の器が床に当たって派手に砕けた。中に入っていた色とりどりの星屑のような金平糖も飛び散り、玻璃の破片とともに辺り一面に広がってしまった。

(あぁ…やってしまった…)

天主の信長の部屋の金平糖が少なくなっていることに気付き、補充をしようと器を手に取ったところ、手元が狂い器ごと落としてしまったのだ。

「信長様がお戻りになられたら謝らないと…」

大事な金平糖とともに貴重な玻璃の器を壊してしまい、信長を失望させてしまうのではないかと思うと胸が痛くなる。

床に散らばった金平糖を一粒一粒そっと拾い集める。

「痛っ…」

割れた玻璃の欠片に指先が触れた瞬間、ピリッとした痛みが走る。
鋭く尖った破片で指先を傷つけてしまったようだ。見れば人差し指の先に血が滲み出していた。
小さな傷だが、度重なる不注意に己の不甲斐なさを感じてしまい、指先のずきずきとした痛みが身体の奥まで蝕んでいくようだった。

「はぁ…」

血が滲む指先を懐紙で押さえ、小さな溜め息とともに信長のいない部屋の中を改めて見遣る。

戦場に赴く信長を見送ってからは、天主には足を向けず、昼も夜も本丸御殿で皆と共に過ごすことが多くなっていた。
正室として城の守りを任されているからということもあるが、本音を言えば天主のこの部屋に一人でいると信長がいない寂しさを強く感じてしまうからだった。

戦は今どうなっているのだろう。
信長や武将達は無事だろうか。
戦場からはいまだ勝敗の報告は来ていない。

(信長様は…お怪我などされていないわよね…?)

懐紙にじんわりと滲んでくる血を見ていると、急に不安な気持ちになってくる。
便りがないのは良いこと、信長に限って怪我などするはずがない…と思い直すが、一度心に浮かんだ不安は心の奥深くにずぅんと重く澱みを残す。
考えても仕方のないことだが、戦のたびに不安な気持ちに囚われてしまうのだ。

「信長様…」

どうかご無事でお戻りください。
貴方の身に何かあったらと考えるだけで、心が引き裂かれるように酷く締め付けられる。
心を凍らせて戦う貴方がこれ以上傷付かぬようにお傍で温めて差し上げたい…そう思うのに、今はただ祈ることしかできない自分が恨めしかった。


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