第24章 離れゆく二人
すぐに旅支度を整えることになり、千代が準備をしてくれる。
「姫様…大丈夫でしょうか?
お方様のことはもちろん心配ですが、信長様に無断で安土を出るなど……家康様がご一緒とはいえ、お怒りを買いはしませぬか?」
「…そうね。私もまだ迷ってる。
信長様に、『待ってる』って約束したのに……。
でも…母上に一目逢いたいの。逢わずに後悔したくない」
きっぱりと言う私に、千代はそれ以上もう何も言わなかった。
(信長様……勝手なことしてごめんなさい。
でも、すぐに帰ってきます……私の帰る場所はここだから)
手鏡を取り出して、自分の姿を鏡にうつす。
首筋に咲く紅い華
信長様の残してくれた証
それは未だくっきりと浮かび上がっていて、あの夜の信長様の熱を思い起こさせる。
(離れていても私は貴方のものです。必ず貴方の元へ帰ります)