第24章 離れゆく二人
小田原へは私も馬で行くことになり、信長様に頂いた愛馬に跨り、家康と数十名の家臣の方と共に相模国へと向かう。
「朱里、気を付けてな。
何かあったらすぐに知らせろよ」
「朱里様、御館様には文で事情をご説明致しますのでご安心下さいね。……ご無理はなさらないで下さいね。
家康様、朱里様をよろしくお願い致します」
「三成に言われなくても分かってる。
行こう、朱里。時が惜しい」
「…うん。みんな、我儘言ってごめんなさい。
……行ってきます」
城門を潜ってしばらく進んだところで馬を止め、お城の方を振り返る。
黄金に彩られた天主が太陽の光を反射して、眩しいぐらいにキラキラ輝いている。
その美しく堂々とした姿を目に焼きつけるように、見つめ続けた。
「朱里、行くよ」
家康の呼ぶ声に手綱を握り直して前を向く。
これから始まる長い道のりを思いながら、馬を歩ませていった。