第24章 離れゆく二人
どれぐらい眠っていたのだろうか…
目蓋を開くと、見慣れた自室の天井と、心配そうに覗き込む、政宗、家康、千代の姿が目に入る。
「……気が付いたか??」
「あぁ、姫様っ。よかった……」
「朱里、気分はどう?分かる?」
三人は口々に声を掛けてくれ、家康は私の手首を取って脈を見てくれている。
(あぁ、私、兄上からの文を見て倒れたんだっけ……)
だんだんと、倒れる前の記憶が蘇り、それと同時にまた哀しみが押し寄せて、取り乱してしまう。
「千代…どうしよう?母上が…母上が…」
「っ、姫様、落ち着いて下さいませっ」
「…兄上の文には、『すぐに帰ってくるように』と書いてあったわ。でも…どうしたらいいのか…」
(母上に逢いたい…でも…信長様がご不在の時に、こんなこと…どうしたら…)
「京の信長様に文を出すか?」
「…いや、京へ使いをやるにしても数日かかります。
安土から小田原までは遠い。
京の信長様からの御指示を待っていては、間に合わないかも知れないですよ」
「だけど、朱里のことで、勝手な真似は…出来ないぞ」
「俺が…朱里を小田原まで送り届けますよ。
相模国は駿河の隣ですし…安土の守りは政宗さん一人でも大丈夫でしょう?
信長様には文を書きます。返事が来たら、知らせて下さい」
「っ、おいっ、家康。そんな勝手なこと…」
「…朱里の、母親に逢いたい気持ち、分かるんです。
状況は違うけど、俺も母親と離れて暮らしてた時期、あるから…。
逢わずに後悔して欲しくないんです」
家康の瞳に一瞬深い哀しみが浮かび、皆、それ以上何も言えなくなる。