第24章 離れゆく二人
「失礼致します。
姫様、小田原の兄上様から文が届いておりますよ」
千代が部屋に入ってきて、文を手渡してくれる。
「……兄上から文?母上からではないの?」
実はここ数ヶ月、母上に文を出しても返事がなく、どうしたのだろうと心配していた。
これまで兄上とはあまり交流がなく、文が届いたことなどなかった。
私と兄上は異母兄妹で、母上は父上の正室だが生来身体が丈夫ではなく、子供は女子の私一人で、男子に恵まれなかった為、側室の子の兄上が家督を継ぐことになっていた。
(どうしたのかしら……)
不審に思いながら文を開き、読み進めていると………
そこには思いも寄らないことが書かれていて……思わず文を取り落としてしまう。
「っ、朱里、どうした?」
「は、母上が……母上がご危篤と……急に体調を崩されて明日をも知れぬご容態だと……」
予想外の内容に目の前が真っ暗になり、何も考えられなくなって…
そのまま私の意識は暗い闇の中に落ちていく。
「朱里っ」「姫様っ」
政宗と千代が名前を呼んでくれているのを遠くに聞きながら、暗く深い闇が私の心を飲み込んでいった。