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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第115章 紀州動乱


腕の中で朱里が身を固くする気配を感じた信長は、口付けを止めて向かい合う。深紅の眸に真っ直ぐに見つめられると、心の奥の不安や迷いまで見透かされてしまいそうだった。

「信長様…?」

「案ずるな。どのような戦であれ、この俺が負けることなど万に一つもない。貴様や子らが危うくなることもない。不安にならずともよい」

朱里を安心させるように頭を優しく撫で、その額に柔らかく唇を寄せる。
押し寄せる不安な気持ちに揺れながらも出陣前の信長を気遣って気丈に振る舞おうとする朱里が健気で愛おしかった。

(案ずるなと言ってもこやつは俺を案じ続けるだろう。俺が数多の命を奪い非情な決断をすることに、清らかなその心を痛めるだろう。朱里が悲しむ姿は見たくはないが、此度の戦は容易くはない。敵にも味方にも多くの血が流れる戦となるだろう。争いのない世を目指しながら戦わねばならぬのは歯痒いが、戦わねばこの世は再び乱れる。ならばいかに犠牲が伴おうとも俺は先に進まねばならない)

信長が戦に向かう度、不安に揺れる気持ちを信長に見せまいとする朱里に罪悪感を感じながらも、日ノ本を統一し争いのない世にすることが己の成すべきことだという思いは変わることはない。

「何があろうとも俺は必ず貴様の元へ戻る。貴様との約束を俺が違えたことなどなかろう?」

「っ…はい」

ぎこちなくはあったが笑みを浮かべる朱里を信長は柔らかく抱き締める。

朱里と出逢うまで、守るべき者の存在がこんなにも己を奮い立たせるものとは思わなかった。守らねばならぬ者を持つことは己を縛る枷と思い、家臣や身内とも距離を置いてきた。情けは大望を成す身の妨げになると信じていた俺に朱里は人を愛し、愛される幸福を教えてくれた。
他人と何かを約するなど益のないことだと思っていたのに、今は愛する者と交わす約束がこの上なく尊いものに思える。

「愛している、朱里。離れていても俺の心は常に貴様と共にある。そのこと、忘れぬように今宵その身にたっぷり刻み付けてやろう」

「信長さまっ…あぁっ…」


互いに離れがたい気持ちを抱えながら、深くまで求め合う。
夜明けまでの限られた時を惜しむかのように……



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