第24章 離れゆく二人
安土にて
信長様が京へと発たれて数日が経っていた。
京からは無事に本能寺に入られたと秀吉さんから文が来て以来、音沙汰がない。
(朝廷との話し合い、上手く行っているのかな……)
「朱里〜、居るか?」
襖が開いて、左手にお盆を持った政宗が入って来た。
「政宗!」
「甘味作ったから、一緒に食べようと思ってな、ほら」
「わっ、これ、うぐいす餅?美味しそうだね!
お茶入れるから、待っててね」
信長様が京へ発たれてから、政宗は私を心配して度々様子を見に来てくれていた。
今日みたいに甘味を差し入れてくれたり、新しい料理の試食をさせてくれたり、と私が一人で落ち込まないように気を使ってくれている。
「ん〜、美味しい〜っ、幸せっ。
……そうだ、政宗、今度、料理を教えてほしいんだけど……
信長様のお好きなもの、自分で作れればいいな、って思って」
「おっ、花嫁修行か?」
「ふふっ、そういう訳じゃないんだけど…
私、信長様に大事にしてもらうばかりで…私から何かして差しあげられること、ないかなって」
「なるほど、それはいいな。
喜ばれるよ、信長様も」