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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第115章 紀州動乱


越後 春日山城内

「……以上が佐助からの報告です、謙信様」

「つまらん」

折目正しく首を垂れる忠臣に対して、上座の謙信は気怠そうに見下ろしながら言い放った。

「小さな小競り合いなどではなく、俺は大戦がしたいのだ」

「はっ…ご意志に添えず真に申し訳ございません。しかし此度の戦場で相手方が見たことのない火器を使用していたという佐助の報告は気になります」

「上田で一揆の鎮圧にあたってる幸からも同様の報告が来ていたな。三ツ者の調べでは、どうやら騒乱が起きているのは越後や甲斐だけではないらしい。規模に違いはあれ日ノ本各地で火の手が上がってる。織田の領内も騒がしいようだ」

「ほぅ…」

織田と聞いて、謙信の声音は僅かに愉快そうな色を帯びる。

「織田の領地でも一揆が起きていると?信長はどうしている?」

「領内で次々と起きる一揆に兵力を割かねばならず、信長は身動きが取れぬ様子。徳川や伊達も一揆の鎮圧のため自領へ戻っているようです」

「情けない。一揆など一息に片付けてしまえばよい」

「だが、見たことのない火器というのは気になるな。おそらく異国製だろうが、百姓が中心の一揆衆が容易に手に入れられる代物とは思えない。兼続、入手先は分かっているのか?」

「いえ、信玄様。領内で見慣れぬ商人が度々目撃されているとの報告は受けておりますが…」

「その商人が日ノ本中に武器をばら撒いているのかな?商人なら異国の美しい品を届けて欲しいものだけどね。武器は美しくないから嫌だな」

兼続たちの話を黙って聞いていた義元はさらりと言ってのけ、手にしていた京扇を優雅に口元に当てた。

「義元は相変わらずだなぁ。だがまぁ、その新型の武器とやら、実際に見てみないと対策の立てようがないな」

「ならば次の戦には俺が先陣を…」

嬉々として身を乗り出す謙信だったが……

「詳細が分からぬ内は危険です。佐助を呼び戻し、仔細を確認するまで謙信様には今しばらくお待ちを頂きたく…」

どこまでも冷静な兼続は好戦的な主をやんわりと宥める。

「……つまらん。ならば、さっさと佐助を呼び戻せ。稽古をする相手もいなくては退屈過ぎて死んでしまう」

「はっ!早急に手配致します」

折目正しく平伏した兼続は素早く身を翻し広間を出て行った。

その後姿を見送りながら、信玄は何事か思案するかのように目を伏せた。


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