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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第115章 紀州動乱


信長の股肱の臣であった森可成の子である蘭丸が、信長の小姓でありながら信長と敵対していた本願寺の法主顕如を真の父のように慕う理由…それは蘭丸の母にあった。

蘭丸の母、森可成の正室は本願寺の熱心な門徒であった。
夫の死後、出家して妙向尼と名乗った彼女は、信長と本願寺の対立が次第に激化していくことに心を痛めていた。
本来中立であるべき宗教勢力が政に口を出し権力を振るうことを信長は蛇蝎の如く嫌っていたが、家臣達や配下の大名の信仰については寛容であった。
由緒ある寺社仏閣であろうと容赦なく焼き払い、刃向かう者は老若男女問わず撫で斬りにする非情さを持ちながらも、己の道行きの邪魔にならぬ限りは家臣や領民達がどのような信仰を持とうとも干渉しなかった。
無辜の民の純粋な信仰心を利用し、己の私利私欲のためだけに民達を戦に駆り立てる宗教者を信長は断じて許さなかったが、戦の絶えぬこの世で生きる意味を見失い信仰に救いを求めるしかない民達の心には理解を示していたのだ。

織田家の家臣の中にも一向宗に帰依する者は少なくなく、妙向尼の信仰も可成が亡くなる以前から黙認されていたが、その子である蘭丸が小姓として己の傍近くに仕えながら、敵対する本願寺に通じているとは信長も思っていなかっただろう。

和睦後、本願寺が取り潰されることなく紀州に移り信仰を続けることを許されたのは、妙向尼が信長に本願寺の存続を強く訴えたためであったとも言われているが、確かなことは分からない。
単なる身内への情だけで重大な決断を下すほど信長は甘い男ではなかった。

(顕如様が再び牙を向けば、信長様は今度こそ本願寺を許さないだろう。俺は顕如様を救いたい。本願寺を、同胞達を守りたい。今のこの平穏な日々が続いて欲しい。それが顕如様の望まれる道行きとは違っても…俺はこれ以上大切な人を失いたくない)

幼き頃に父を亡くした蘭丸にとって、顕如は尊敬する師でありながら大切な家族でもあり、織田軍の仲間も本願寺の同胞達も、蘭丸にとってはどちらもかけがえのない人々であった。

無惨に散っていった同胞達
守れなかった親しき者達の命
悲しみと絶望に打ち拉がれた日々

今度こそ守らねばならない。
かけがえのない守るべきものたちを…


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