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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第115章 紀州動乱


「それは…分からぬ。仏への信仰だけで政が為せるなどとは私も思ってはいない。だが、私は進まねばならない。私を信じて死んでいった者達の無念を晴らさなければならない。それが不本意にも生き残った者の為すべきことだ。この身がどうなろうとも私は信長を倒す。私に残された道はそれしかないと心得ている。
蘭丸、これから行くは修羅の道だ。心に迷いのあるお前を連れて行くわけにはいかない。堪忍な」

「顕如様…」

自ら滅びを覚悟したかのように悲壮とも言える決意を示しながらも、顕如の表情は凪いだ湖面のように穏やかだった。
そこには死線に向かう猛々しさなどは感じられず、さりとて容易には翻意させられそうもないような強い決意に満ちていて、蘭丸はそれ以上何も言えなかった。


蘭丸は幼き頃に父を戦で亡くしていた。
森家は代々、美濃守護職の土岐家に仕える家柄だったが、土岐家が美濃の蝮と呼ばれた斎藤道三によって滅ぼされると、蘭丸の父、森三左衛門可成は美濃を離れ、尾張の織田家に仕えるようになった。
可成は槍の名手として武勇の誉れ高く、信長にも信頼されて数々の戦で武功を立て『攻めの三佐』とも呼ばれた勇猛な男であった。
可成は信長の上洛戦においても前線に立って戦い、近江宇佐山城を与えられて城持ちとなったが、信長が摂津野田・福島城で三好三人衆・本願寺と対峙していた矢先に、浅井・朝倉連合軍が突如挙兵した。
越前から南下してくる浅井・朝倉の二万を超える大軍を迎え撃つ最前線にあったのが、可成が守る宇佐山城であった。
浅井・朝倉の大軍に対して可成の軍は僅か千人ほどであったが、可成は城を出て果敢に応戦し、猛将の名に相応しく一時は大軍を押し返して獅子奮迅の戦いぶりをみせる。が、本願寺の働きかけによって比叡山延暦寺が浅井・朝倉の味方につくと、その圧倒的な兵力差に奮戦及ばず可成は討ち死にしてしまう。
当時の信長は周りを敵に囲まれた四面楚歌の状況で本願寺と対峙しており、宇佐山城の危急を聞いてもすぐに援軍を送れる余裕はなかった。

父の死後、森家の家督は蘭丸の兄が継いだ。兄は初陣も済ませていない十三歳の若年であったが、信長は可成の生前の武功を高く評価し、森家の所領はそのまま安堵した。
その後、蘭丸は小姓として信長の傍近くに仕えることとなったのだが…

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