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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第115章 紀州動乱


「孫一の行方はまだ掴めぬのか?」

「はっ、雑賀の里には手の者を忍ばせてはおりますが…」

織田軍による紀州征伐の後、雑賀党は分裂、頭領であった雑賀孫一は行方知れずとなっていた。

雑賀党のまとめ役であり、頭領でもあった雑賀孫一は、雑賀の鉄砲傭兵団の隊長であり、その鉄砲の腕前を買われて各地の戦いで活躍した。
雑賀衆の中にも多くの門徒がいた本願寺が信長と対立するようになると、孫一はいち早く本願寺の救援に大坂へと向かい、鉄砲を使った先進的な戦術によって織田軍を撃破し、信長を苦しめた。
孫一は本願寺の坊官であった下間頼廉とともに『本願寺 左右の将』と並び称されるまでになった男であったが、信仰より利を重んじる利己的な男でもあり、狂信的とも言える門徒達と比べると本願寺への信仰心はさほど篤くはなく、顕如が織田との和睦に応じると、孫一もまた兵を引き、紀州へと退いた。

此度の紀州不穏の報に際して、信長は光秀に命じて行方知れずになっている孫一の消息を追わせていたのだった。

「今の雑賀を纏められる才覚がある者はあの男ぐらいしかおらぬだろう。泰平の世になったとて、大人しく燻っていられる奴とも思えん」

「戦なき世は、戦乱の中でしか生きられぬ者にはさぞかし生き辛く思われるのやも知れませぬな」

「戦は人を変える。良い意味でも悪い意味でもな」

「御館様…」

この世に生を受けた日から、身内をも巻き込んだ争いの中に絶え間なく身を置いてきたのは信長も光秀も同じだった。

生きるために奪い、殺し合う。
民を、家を、国を守るために戦をする。
誰しも大義があり、大義のために戦うのだ。
戦乱の世とはいえ、武士達は理由もなく殺し合ってきたわけではなかった。

「己の生きる場所、大切なものを守るために人は戦う。そこには義がある。金で雇われて戦う雑賀の者とて同じだろう。奴らには奴らの信じる義がある」

「それぞれに正しいと信じる義があり、それ故にぶつかり合う。互いに認め合えれば良いのでしょうが…」

「戦の中で生きてきた者が大半だ。大切なものを無くし怨みや絶望に囚われた者も多い。一朝一夕にはいかぬ。だが、世は少しずつ変わってきている。そう思わぬか、光秀?」

「はっ、仰せの通りで」

武力による支配から対話による統治へ、日ノ本の政は変わりつつある。だからこそ、今再び戦乱の世へ戻るわけにはいかないのだ。
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