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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第115章 紀州動乱


信長は数日前から城を留守にしていた。
行き先は紀州、鷺森(さぎのもり)

『紀州で不穏の動きあり』

突如もたらされた不穏な知らせは織田軍に久しぶりに緊張をもたらした。

信長による天下布武が成し遂げられ、日ノ本の統治も落ち着いている近頃では大きな戦が起こることもなく、領主間での些細な諍いや小規模な一揆が時折起きる程度に留まっていた。
各地の大名達も全て信長に臣従、もしくは同盟関係にあり、表面的には織田家に敵対する勢力はないものとなっている。
信長が戦場に赴くことも減り、代わりに朝廷や商人達との交渉事や異国との通商に費やす時間が増えていた。

(信長様が戦場へ行かれることもなくなって、このまま戦のない穏やかな日々が続いていくのだと…そう思っていたのに。信長様…何事もなく無事にお戻りになりますように…)

酷い悪夢に魘されて目覚めてしまい、今宵はもう眠れそうになかった朱里はまだ暗い寝所を出て天主の廻縁に立つと、無数の星が煌めく夜空を祈りを込めて見上げた。


紀州は今現在、織田家の統治下にあるが、この国は古くから寺社勢力や惣国一揆といった、天下人を頂点とする中央集権思想に真っ向から対立する勢力が蟠踞(ばんきょ)する地であった。
紀伊国は高野山、根来寺、粉河寺、熊野三山といった寺社勢力や惣国一揆が高い経済力と軍事力を擁して地域自治を行ってきた国であり、守護職による領地支配は寺社勢力の協力なしには成り立たない地であった。
更に下剋上が横行して世が乱れ始めると守護職の力は益々弱くなり、紀伊国は大名が統治、支配する国ではなくなっていった。
中世において、寺領は朝廷も幕府も無断で立ち入ることができない聖域であり、寺院内部への政治権力による介入はいかなる場合であっても認められるものではなかったのだ。

自治を行っている集団の中でも大きな勢力を擁していたのが雑賀衆である。彼らの支配する地域は雑賀惣国(さいかのそうこく)とも呼ばれていた。雑賀惣国は、さらに十ヶ郷(じっかごう)・雑賀荘(さいかのしょう)・中郷(なかごう)・宮郷(みやごう)[社家郷(しゃけごう]・南郷(みなみごう)」の五つ(雑賀五組)に分かれていた。


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