第23章 上洛
本能寺に入ったその夜
先に入京していた光秀と久しぶりに対面する。
「ご無事のご上洛、何よりです、御館様」
「光秀、大義であった。
官位の件は、上手く収まりそうだな」
「残るは御館様のご縁談の件ですが……
そういえば、朱里の様子はどうですか?
その後、落ち着きましたかな?」
「ああ、大事ない。
この縁談の件、朱里には内密にしてある。
早々に片付けて、安土に戻るぞ」
「はっ」
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御館様の宿舎を共に辞して、秀吉と光秀はそれぞれの宿舎へと向かう。
「…秀吉、安土の守りは大丈夫か?
御館様のご上洛は既に近隣諸国の知るところとなっている。
この機に謀叛を企むものが出るやもしれぬ」
「守備は三成に指示をしてある。
政宗と家康の二人がいるから問題ないだろうとは思うが…
京に長居はできないな」
(まあ、御館様は長居するつもりは毛頭ないんだろうけど………)
昼間、本能寺に入った途端、公家や町衆が、『挨拶を』と言ってひっきりなしに御館様に謁見を求めてやって来ていた。
御館様は意外にもそれら全てに応じておられたが、形式的なことがお嫌いな御館様のこと、内心は苛立っておられるに違いない。
(御館様の我慢の限界が来る前に、問題を片付けて安土に帰城しなくては……)