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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第110章 魔王の霍乱


突然開けた山頂には草花が一面咲き誇っていた。様々な色合いの花や生い茂る緑の葉が視界一杯に広がる光景は壮観で、このような景色が見られるとは想像していなかっただけに言葉を忘れて見入ってしまった。

「凄いっ…こんな山の上にこんなに素敵なお花畑…」

「……ではない」

「へ?」(お花畑…じゃない?)

目の前の美しいお花畑に思わず感嘆の声を上げた私だったが、思いがけず信長様は私の言葉を遮った。

「えっ…あの、信長様?お花畑じゃないってどういうことですか?こんなに綺麗なお花がたくさん咲いてるのに…」

白や黄色など綺麗な色合いの小さくて可憐な花が辺り一面を埋め尽くして咲いている様はまさに花畑といえ、見ているだけで癒されそうだった。

「近くに行って見てみるといい」

悪戯を仕掛ける子供のような嬉々とした顔でそう言うと、信長は朱里の手を取って歩き始める。
さり気なく絡められた指先に胸がドキドキと高鳴り、気持ちが余裕なくゆらゆらと揺れ動く。

(あ…いけない…こんな風に手を繋いでいると、ドキドキしてるのが伝わってしまいそう)

先程まで馬の背で身体を寄せ合っていた時とはまた別のときめきを絡まる指先から感じてしまい、平静ではいられなくなる。

揺れ動く気持ちのままに信長に手を引かれて歩いていた朱里は自然と足元に視線をやっていて、何気なくそこに咲いていた草花に目を止めた。

(あっ…これ、薬草だ。確か切り傷に効くやつ…ん?あれ、あっちに生えてるあの草はもしかして…えっ、あれ?あれも書物で見たことがあるような…)

「気が付いたか?」

キョロキョロと辺りを見回す朱里に信長はニヤリと不敵な笑みを見せる。

「信長様、もしかしてここにあるのは…」

「全て薬草だ。元々この地に自生していた日ノ本古来の薬草に加え、宣教師達に命じて取り寄せた南蛮の薬草も植えさせた。全て合わせて三千種ほどになろうか…俺には薬草の細かな種類など分からんがな」

「南蛮の薬草も…それではここにある薬草は全て信長様が植えさせたものなのですか?三千種だなんてそんな途方もない数の薬草を…一体いつの間にこのようなことを…」

目の前の広大な土地に広がる草花が全て薬草だということに驚きを隠せない。


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