第109章 光秀の閨房指南ー其の弐
翌朝、障子越しに柔らかな朝の光が射し込む頃、眩しさに目蓋を擽られて意識が浮上する。
「んっ……」
優しく髪を撫でられる感触に心地よさを感じて目線を上げるとそこには私を見つめる信長様の柔らかな笑顔があった。
「っ…あっ…信長…さま?」
「目が覚めたか?よく眠っていたな」
慈愛に満ちた優しい言葉とともに、ちゅっと額に口付けられる。
(うっ…朝から甘い。嬉しいけど、ちょっと恥ずかしいな)
広い寝台の上で私は信長様の腕の中に包まれていて、布団の中では足先までしっかり絡められて隙間なくぴったりと密着している状態だった。
男らしく逞しい胸元に頬を寄せると、トクトクっと心の臓の規則正しい音が聞こえ、何とも言えない安心感に包まれる。
「身体は大事ないか?」
「えっ!か、身体って…」
「…昨夜の酒は抜けたか?頭が痛いとか吐き気がするとか…そういったことはないか?」
(あ、そっち?二日酔いを心配して下さってるのか…やだ、私ったらてっきりあっちの方かと…)
方向違いの想像をしてしまい、思わず布団の中でもじもじと足を擦り合わせながら俯いてしまった私を信長様は不審そうに覗き込む。
「顔が赤いな。やはりまだ酒が残っておるのではないか?」
「だ、大丈夫です!もうすっかり元気ですから!」
「そうなのか?ならばよいが…つらいなら今日は一日休んでおってもよいのだぞ?」
優しい労りの言葉とともに頬をするりと撫でられる。
(ゔっ…なんて優しいの、信長様。でも私、昨日はそんなに酔ってた自覚ないんだけど…信長様には一体どんな風に見えてたんだろう…それはそれで気になる!)
もしかして酔っておかしなことをしでかしてしまい、とんでもない酔っ払いだと呆れられたのではないかと急に心配になってくる。
冷静になって思い起こしてみると、昨夜は結局いつもの如く信長様に丁寧に愛されてしまい、信長様を喜ばせる計画はいつの間にか何処かへ行ってしまっていた。
どこで意識を手放したのかすら記憶にないぐらいなのだ。
(それなのに夜着がきちんと着付け直されてる…信長様がして下さったんだわ。ううっ…情けない)
そう思うと寝起きの乱れた姿が急に恥ずかしくなってしまい、信長様の腕の中で身を捩る。
「どうした?何をしている?」
「い、いえ何も…」
「…貴様、昨夜から少しおかしいぞ?やはり何か隠して…」