第22章 心の棘
文を見ながらみるみる眉間に皺が寄る俺に、恐る恐るといった様子で秀吉が問いかける。
「あ、あの、御館様……朝廷からの文にはなんと?
やはり、官位の件ですか?」
「ああ、上洛しろと言ってきている。
………それと縁談話だ」
文を秀吉に乱暴に渡しながら、言う。
「えっ、縁談??誰と誰のですか??
……御館様と近衛様の姫?なんでそんな話に?」
「知らんっ。朝廷は織田家との結びつきをより強固なものにしたい、ということだろう。
婚姻の力など借りずとも、出来ることであろうに。
秀吉、直ちに上洛の軍勢を整えよ。
光秀、貴様は先に行け。公家どもと会い、根回しをせよ。
三成、政宗、家康は、安土の留守を守れ。
それと……留守の間、朱里のことを頼む。
俺は………官位も縁談も受けぬぞ」
「はっ、仰せのとおりにっ」