第108章 離れていても
「……全く、貴様は…少しは欲深くなればよいものを…」
「……はい?」
「貴様以上に大事なものなどないと、俺に何度言わせる気だ?」
「えっ…で、でも、朝廷の…帝の御命令は絶対ですし…京でのお仕事の方が大事に決まって…っ、んんっ…」
ーちゅっ…ぢゅううぅ…
いきなり伸びてきた手に顎を掬われ、強引に上を向かされたかと思うと、深く唇が重なった。
呼吸まで奪い尽くすほど激しく唇を吸われ、頭の奥がじんっと痺れて思考が追い付かなくなる。
(んっ…何で急に口付けなんて…)
しかもいつも以上に激しい…やっぱり何か怒ってる…?
「っ…んっ…やっ、やめっ…っ…」
息が出来ずに苦しくて押し返そうとするけれど、信長様の身体はビクリともしない。
何か機嫌を損ねるようなことを言ってしまったかと混乱する頭で必死に考えてみるが皆目見当が付かなかった。
なされるがまま激しい口付けを受け入れていると、散々貪られた後で漸く熱い唇は離れていった。
「っ…はぁはぁ…いきなり何で…?」
「ふん…貴様がいつまでもつまらぬことを言うからだ」
「つまらぬって…」
不機嫌の理由が分からず首を傾げる私に対して、信長様は濡れた唇を指先で色っぽく拭いながら不敵に言い放ったのだった。
「まぁ、よい。今年は盛大に祝ってやるゆえ、俺が戻るのを楽しみに待っておれ」