第22章 心の棘
あの日以来、私は部屋から出ることが出来なくなり、夜もあまり眠れないでいた。
信長様は昼間、政務の合間に何度も逢いに来てくださり、夜は自室で休むことも許して下さった。
自室から出て人に会うのが怖かった。
『御館様を惑わす妖婦』 『人質』
『織田家にふさわしくない』
あの日言われたことが頭から離れず、自分を見る周りの目が気になって仕方がなかった。
信長様が私のせいで悪し様に言われることにも耐えられなかった。
信長様が人目を憚らず触れてくださることにも、ただ嬉しくて愛されてると無邪気に喜んでいた自分が情けなくて………
信長様は『妻になれ』と言って下さった。
欲しかった言葉 待ち望んでいた言葉
嬉しかった 泣きたいぐらいに
ずっとお傍に居られる
でも……私がお傍に居てもいいんだろうか
私でいいんだろうか………
もっと、信長様に、織田家にふさわしい人がいるんじゃないのかな………
私は信長様に大事にしてもらうばっかりで、何もしてあげられてない………
あの日の出来事が心に棘のように突き刺さって、ズキズキとした痛みが全身を蝕んでいくようだった。