第107章 嫉妬は甘い蜜の味
「貴様は本当に…何年経っても変わらぬな。愛らし過ぎて困るばかりだ。この俺をこんなにも悩ませる女は貴様以外にはおらん。今もこの先もずっと俺の傍におれ。愛してる、朱里」
「んっ…私も…愛しています、信長様。この先も変わらず、ずっとお傍にいさせて下さいませ」
どちらからともなく互いに求め合い、深く深く身体を重ねていく。
どちらが欠けても生きてはいけないと、そう思うほどに互いを必要としているのだと実感する瞬間だった。
(愛してる…などという言葉では足りない。朱里…貴様を想い欲するこの心を、どのように伝えれば貴様へ届くだろう…)
年を重ねるたびに想いは深くなる。
愛してる、大切だ、と想いの丈を何度口に出して伝えても、伝えきれていないのではないかと不安になる。
己の想いを曝け出すことなど、昔の自分ならば決してしなかった。
朱里と出逢い、愛を知った。
人を愛し、人から愛されることができる人間なのだと…朱里が教えてくれたのだ。
遠く鐘の音は荘厳な音色を響かせて新しい年へと続いていく。
年が明け、変わるものは数多あれど、愛しい女を腕に抱き、その身も心も自分だけのものだと感じられるこの幸福な瞬間を、信長は永遠に感じていたいと願うのだった。