第107章 嫉妬は甘い蜜の味
確かに信長の言うとおり、吉法師は既に一歳を過ぎ、大人と同じ物も食べられるようになってきて、乳をやるのを止めても支障はないように思われていた。
それでも吉法師に求められると拒絶するのが可哀想になり、何となくずるずると乳離れできぬまま、いまだに眠る前などに限ってだが乳を与えるのを止められずにいたのだった。
(吉法師の乳離れは私も気にしていたことではあったけど、こんな形で信長様に責められるなんて…)
自分でも気になっていたが、まさか男親である信長が気にしているとは思ってもいなかった。
二人目でも子供の個性はそれぞれであり、結華の時とは違うことも多かったし、吉法師は織田家の嫡男ということもあって、その育て方には日々悩むことも少なくはなかったのだ。
絶え間なく与えられる胸への刺激にじわじわと女としての快感を感じながらもそれと同時に苦い罪悪感のようなものが胸の内に広がっていった。
「………何を考えている?」
耳朶を唇で緩く喰まれながら耳奥へと低く囁かれる。
「っ…耳、ダメです…変になっちゃ…う」
「ここも俺のものだ。否やは言わせん。俺の前で考え事などする貴様が悪い。言え、何を考えていた?吉法師のことか?」
今度は歯を立てて耳朶を強く噛まれる。その行為はまるで信長の嫉妬心を露わにしているかのようだった。
「あっ…つぅ…うっ、やっ…」
痛みに顔を顰める朱里を宥めるように、歯を立てた箇所にねっとりと舌を這わす。
大きく舌を使ってねっとりと優しく舐められて、じんわりとした気持ちよさが広がっていく。
痛みと快感を交互に与えるような信長の愛撫に翻弄されて、朱里は頭の中をぐちゃぐちゃに掻き混ぜられているような錯覚に陥っていた。
「の、信長様っ…も、止めてくださ…い、っくっ…」
(どうしてこんな…これ以上続けられたら、おかしくなっちゃう…)
「止めて欲しいのか?ならば今、己が考えていることを口に出せ」
「っ…んっ、何も…考えてなどおりません。信長様のことしか…っ、こんな風にされたら…私は貴方のことしか考えられなくなるのにっ…ひどいです」
「くっ…」
涙をうっすらと滲ませた恨めしげな瞳で見つめられ、信長の心はグラグラと揺れ動く。
(ちょっとした意地悪のつもりだったのだがな。こんな目で見られては…堪らんな)