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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第105章 毒と薬は紙一重


朱里と廊下でぶつかった後、家康は自室へと戻っていた。

(朝から蕩けた顔しちゃって…ほんと目に毒)

朱里の首筋にわざとらしくくっきりとついた口付けの跡


大人げないほどこれ見よがしの信長の独占欲と、それを分かっているのかいないのか、いつまでも変わらぬ朱里の純粋さ。
そんな二人の様子は見慣れているはずなのに、何故かいつも面映い気持ちにさせられるのだ。

いつもどおりの刻限に軍議の席に現れた信長の涼しい顔を思い出して、家康は苦笑いを浮かべた。

「はぁ、もぅ…やってられない…仕事しよ」

溜め息を吐いて独り言ちると、家康は薬草の入った籠を手元に引き寄せる。
朱里とぶつかった時に廊下にぶち撒けてしまったものを慌ててかき集めて籠に放り込んでいたので、いくつか種類があったものがぐちゃぐちゃになってしまっていた。
朱里は拾うのを手伝おうとしてくれたが、家康はそれを止めた。

なぜなら、数種類の薬草の中には朱里には触れて欲しくない薬草…毒草が含まれていたからだ。

毒と薬は紙一重。

人を死に至らしめるような猛毒であっても、使い方によっては人の命を救う薬になる。

植物の毒成分の働きは様々である。人や動物が触れたり口にしたりすると、毒性の強いものでは炎症や中毒症状、痙攣、嘔吐などの症状を起こし、時に死に至ることもある。
そこまでの強い毒性を持たない軽度なものでは、苦味や酸味を感じる程度のものもある。
有毒植物は加工し毒性を除去あるいは弱めることによって、食用・薬草として利用されることもあり、毒があるものだからといって一概に排除する必要はない。

自然界の中には、そのような薬草が数多存在していて、家康にもいまだ見たことのないものもある。
家康にとって薬草の採取は趣味と実益を兼ねており、日々探究の毎日だった。

今日も、とある有毒植物を毒性を弱めるために長時間加熱し乾燥させたものを煎じるつもりだった。
朱里と廊下でぶつかった時は、毒のあるものないもの、様々な薬草を天日干ししていたものを自室に持ち帰るところだったのだ。

加熱と乾燥も済んで、後はじっくり煎じるだけだった。

(混ざっちゃったから種類ごとに分け直さないとな…)

籠の中から一つずつ取り出しては種類ごとに仕分けていくが……


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