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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第105章 毒と薬は紙一重


「家康?」

黙ったまま視線を逸らした家康の顔を、朱里は不思議そうに覗き込む。

(あれ?家康、なんかちょっと顔赤い?)

「あんた、それ…隠せてるつもりで隠せてないからね」

「へ?」

トントンと自身の首筋を指で指し示す家康をキョトンとした顔で見ていた朱里だったが、家康の言わんとすることに思い当たったのか可哀想なぐらいの動揺を見せる。

「ち、違っ…これはその…違うの、家康っ…」

真っ赤になって首を押さえている。
違うわけがない。今更ながら、誰が見ても明らかだった。

(うぅ…信長様の馬鹿ぁ…わざとだ、これ、絶対)

姿見でしっかり確認しなかった私も悪いが、こんな微妙な位置に残すなんてわざとに決まってる。

(家康に見られるなんて恥ずかし過ぎる…寝過ごして、首にくっきり跡付けて、これじゃあ朝まで抱かれてましたって言ってるようなものじゃない…)

目線を泳がせて髪で何とか隠せないかと毛束を弄っている朱里に家康は、はぁ…っと呆れたように溜め息を吐く。

「じゃあ、俺はこれで…」
(全く…あの人の溺愛っぷりときたら…はぁ…面倒なことに巻き込まれないうちに退散しよう)

明らかに挙動不審な朱里を見ないフリして、家康はさっさとその場から立ち去ることにした。



家康と別れた朱里は吉法師を迎えに乳母のところへ向かった。

「……吉法師?」

そおっと襖を開けて中の様子を覗くと……

「だぁ…あぅ…」

吉法師は木製の押し車を押しながら、部屋の中をよちよちと歩いていた。
まだ覚束ない歩き方ではあるが、日々歩ける距離が増えてどんどん活発になってきていた。
目が合うと、嬉しそうに笑ってこちらに歩いてこようとする。

「吉法師、上手にできたね」

目の前まで歩いて来た吉法師を抱き上げて声を掛けると、キャッキャッと楽しそうに声を上げた。

(うっ…可愛いなぁ…一人でもうこんなに歩けるようになったんだなぁ。この子が生まれてもうすぐ一年が経つなんて、早いな)

吉法師は、信長様に似ているのか活発な赤子で、間もなく一歳になるが成長は早い方だと思っていた。
いつの間にかできることも増えていたりして、驚かされることも多かった。

(信長様は子供の頃はやんちゃだったらしいけど、吉法師はどうだろう。男の子の子育てって分からないことも多いな…)


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