第103章 旅は道連れ
「大丈夫だ、朱里さん。俺たちは息ぴったりのズッ友だから、これぐらいの行列、何の問題もなく捌いてみせるよ。君は信長公とお祭りを楽しんできて」
「で、でも…」
「そうだぞ、余計な気使うなって。せっかくそんな、き、綺麗にしてきたんだからよ」
(ん?幸村、何か顔が赤いような…気のせい?提灯の灯りのせいかな?)
「幸村…?」
目線を逸らし、ボソボソっと言う幸村の頬がほんのり赤いような気がした。
「幸村が女性の装いを褒める日が来るなんて…」
「うるせーぞ、佐助!」
照れ隠しなのか、佐助くんを羽交い締めにする幸村の顔は益々赤くなっていて……
私もまた嬉しいような恥ずかしいような気持ちになった。
屋台の手伝いを遠慮されて申し訳ない気持ちではあったが、佐助くん達とは別れて信長様と二人でお祭りを回ることにする。
(二人きりになれるなんて思ってなかったから、嬉しいけどちょっと緊張するな。信長様は…いつもと変わらないみたい…)
ドキドキと激しくなる胸の鼓動が繋いだ手から伝わってしまわないかと気が気ではない私に対して、信長様は常と変わらず冷静そのものに見える。
着物を新調し、念入りに着飾って……何だか自分だけが張り切ってしまっているみたいで少し寂しかった。
(信長様に褒めて欲しかっただけなのにな…)
賑やかな祭りの喧騒もどこか遠いもののように聞こえ、心の底からお祭りを楽しめないでいる自分に戸惑ってしまう。
せっかく二人きりになれたというのに碌に話もできず、気不味さだけが広がっていく。
(こんなはずじゃ…なかったのに…)
気に入った着物を身に付けて大好きな人と手を繋いで歩いているというのに私の心は晴れなかった。
そんな自分の後ろ向きな感情に戸惑い、いつの間にか口数も少なくなり、俯きがちになっていた。