第103章 旅は道連れ
屋台を覗きながら賑わう参道を歩いていく。
(佐助くんと幸村が出している屋台はどこだろう。確かこの辺りって言ってたと思うんだけど…ん?あれ?あそこの屋台、凄い人集りができてるな…何の屋台だろう?)
順番待ちの長い列ができた一際賑わっている屋台が見えた。
何を売っているのか気になって、背を伸ばし覗き込もうとしていると……
「朱里さんっ!」
「えっ…あっ…佐助くんっ?」
屋台で忙しそうに立ち働いている売り子さんに声を掛けられて、見るとそれは佐助くんだった。
隣には幸村もいて、額に汗を浮かべて忙しそうにしていた。
「おー、来たか、朱里」
「幸村!ここ、二人の屋台だったんだ…凄く賑わってるね!何を売ってるの?」
「これだよ、朱里さんもおひとつどうぞ」
「えっ…これ…?」
佐助くんが差し出してくれたのは、何と胡瓜が丸ごと一本串に刺さったものだった。縦縞模様に皮が剥かれている。
青々とした新鮮そうな胡瓜は見るからに美味しそうではあるけれど……
(…何で胡瓜??)
「えっと…これ、胡瓜…だよね?」
「そう、丸ごと胡瓜の一本漬けだ。冷やしてあるから冷たくて美味しいよ」
胡瓜の一本漬け…初めて聞くし、勿論お祭りの屋台で売っているのも見たことなかった。
「俺の故郷では、よくある夏の食べ物だ。今年は胡瓜が豊作で売り捌けず余りがちになって村人達が困ってるって兼続さんに聞いたから、城で買い取ってお祭り屋台で出すことにしたんだ」
「そうなんだ。村の人達が一生懸命作ったものが無駄になるのは勿体無いものね。こんな風に胡瓜を食べるのは初めてだけど…いただきます」
胡瓜を丸々一本齧るなど生まれて初めてで、少し気恥ずかしくもあったが、思い切ってパクリと頬張った。
パリッと小気味良い音がして、口の中に瑞々しさが弾け飛んだ。
一口齧り取ったものをパリパリと咀嚼していると、青々とした新鮮な胡瓜の味とともに微かな塩気を感じる。
(ん…美味しいっ!胡瓜そのものも新鮮で美味しいけど、この絶妙な塩気がいいな!暑い夏にぴったりって感じ)
適度な塩分と冷えた胡瓜の瑞々しさが、夏の暑さに疲れた身体に丁度よかった。
「佐助くん、これ、すっごく美味しいよ!何本でも食べられそう」
「気に入ってもらえてよかった。ちなみに一本丸ごとが多い人向けには、小さく切ったものも用意している」