第103章 旅は道連れ
縋るように襟元をキュッと握り、身を寄せてくる朱里の姿に信長の鼓動はドキドキと早鐘を打つように騒がしくなる。
「祭りなど…どこも似たり寄ったり、同じだろうに」
「同じでも…私は信長様と行きたいんです。連れて行って下さいますか?」
「……良いだろう」
「ふふ…ありがとうございます」
信長様と明日の約束ができて嬉しくて頬を緩めた私の額に、チュッと不意打ちの口付けが降ってくる。
「っ…!?」
「貴様はもっと自覚を持て」
「ええっ…」
(どういう意味だろう…)
額に押し付けられた唇はそのまま目蓋へと滑り降りてきて、ちゅっちゅっと啄むように口付けられる。
「んっ…やっ…」
「貴様にこの悩ましくも美しい瞳で見つめられると俺はいつも平静でいられなくなる。俺だけではない、他の男どもも皆そうだ」
「やっ…そんなこと、ない…です」
「だから自覚を持てと言うのだ。あまり俺を…惑わせるな」
「あ…んんっ…」
顎を掬われ、深く唇を塞がれる。
強引に歯列を割って侵入してきた熱い舌が口内を嬲るように這い回る。
怒ったような強引な口付けに戸惑っているうちに、グッと腰を引き寄せられて深く深く重ねられる。
(っ…こんな深い口付け…クラクラする。もぅ…何も考えられない)
口付けだけで蕩けされられた身体は、力が抜けてくったりとしてしまう。
信長様の背中に腕を回して縋り付くと、煌々と燃える焔のような深紅の瞳に見つめられる。
吸い込まれそうな深い紅
抑え切れない欲の焔を燃やす緋色の瞳に、心の内を酷く掻き乱され惑わされるのは、いつだって私の方だ。
「信長様っ…」
「くっ…朱里っ…」
互いに求め合いどちらからともなく重なった身体は、ゆっくりと深くなっていく宵闇に溶けていった。