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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第103章 旅は道連れ


越後上布は、苧麻(ちょま、からむし)という植物を原料とする高級な麻織物で、古くからこの越後の地で冬の長い農閑期の間の民達の手仕事として発展してきた織物であった。
上布とは細い麻糸を平織りしてできる上等な麻布のことで、幕府や朝廷にも献上されている高級な品のことである。

越後上布は苧麻を指先で績(う)んで糸とし、居座機(いざりばた)を使って製織する。多くは先染めによって縞(しま)や絣(かすり)を織り出し、雪晒(ゆきざらし)をする。
苧麻(ちょま)の繊維を爪と指先で細かく切り裂いて、撚り合わせて紡いで糸にしていくのは手間も時間もかかる作業であり、それゆえに越後上布の反物は値段も張るのであった。

各地の大名から信長様に献上される品々は煌びやかで豪華絢爛なものばかりであり、その中には各地の名産である反物なども多く、私も一緒に献上品を見る機会もあったのだが、越後上布を見るのは初めてだった。

(わぁ…やっぱり素敵。サラリとした生地で手触りも良さそう)

店主が奥から持ってきてくれた、越後上布で仕立てられた着物や帯はどれも素晴らしいもので、私は一目で惹きつけられてしまった。

「いかがですか?是非、手に取ってご覧下さい。見た目だけでなく着心地も逸品ですよ」

言われたとおり手に取ってみると、驚くほど軽い。
透け感のある繊細な生地は、極細の麻糸が丁寧に織られて作られているのだろう。
軽くて涼やかな印象は、見ているだけで清涼感がある。

「ああ、やっぱりいいね。どれも職人の丁寧な仕事ぶりが見てとれる逸品だね。朱里には、そうだね…これとか…これもいいね」

義元さんはそう言うと、手に取って次々に私に合わせてくれる。
そのどれもが素敵で、最初は遠慮していた私も次第に着物選びが楽しくなってしまい、いつになくはしゃいだ気持ちになっていた。




(結局、何だかんだ買ってしまった…)

勧められるまま、着物や帯、小物など一通り揃えて買い、店を後にする。
さすがに義元さんに甘えるわけにはいかず、贈るという申し出は丁重にお断りした。義元さんは残念そうにしてくれたけど…
旅先での予想外の買い物だったが、良い品に出逢えた私の気持ちは晴れやかだった。

普段は衝動買いなどしないが、越後上布はそれほどに惹きつけられた品だったのだ。

(明日のお祭りで着るのが楽しみ…早く信長様に見てもらいたいな)

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