第103章 旅は道連れ
私が返答に困っていると、佐助くんと幸村が横から話に割って入ってくれた。
「え…どうして?俺、何か困らせるようなこと言ったかな?」
義元さんは困ったように眉根を下げる。
「あーもう、朱里、気にすんな。義元は今は美術品のことしか興味がねぇから…昔の戦のこととか家のこととか、そんなもん全然気にしてない奴だからな。お前も変な気遣わなくていいぞ」
「ああ、朱里、信長との戦で今川家が滅んだことを気にしてくれてるの?優しいね。でも大丈夫。あの戦で信長が勝つのは必然だった。だから俺は信長を恨んでないよ。今川家の家臣達とは違って俺自身は天下に名を馳せることに興味はなかったからね。俺は、美しい美術品や優れた文化が後の世に受け継がれていくために日ノ本から戦がなくなればいいなって思うぐらいだよ」
「義元さん…」
「それよりも、君とはもっと美しいものの話がしたいな。朱里は着物も装飾品もとても品のいいものを身に付けてるね。どれも高価なものだけど上品で繊細な仕立てだ。それは君の趣味?それとも信長の見立てかな?うん、君にすごく良く似合ってるし、素敵だよ」
「あ、ありがとうございます」
(すごい褒められるな…こんなに面と向かって殿方に褒められるなんて、何だか落ち着かないよ…それに、義元さんってさり気なく触れてくるけど、全然嫌じゃないっていうか…)
先程から色々と褒められながら髪や手にさり気なく触れられているのだが、それがまた嫌味がなく何とも自然なのだ。
義元の醸し出す中性的な魅力のせいゆえか、思わずうっとりとしてしまい、されるがままになっていた。
「この場に信長公がいなくてよかった」
「…だな。またややこしいことになるとこだったわ。信玄様だけでも面倒臭いのに義元までって……ったく、朱里のやつ、どんだけなんだよ…」
「誰からも愛される天女か…謙信様にとっても朱里さんは特別みたいだし…これは、この滞在中、一波乱ありそうだな」
「やめろ、佐助。お前が言うと冗談に聞こえねー」
「いや、俺は至って真剣だ、幸村。これは、いつどこで朱里さんを巡って斬り合いが始まるか分からない…」
「その顔で言うの、マジやめろ。謙信様はお前の担当だからな、しっかり抑えろよ」
「うぅ…担当替えを切に願う」
「無理に決まってんだろ!」
「……二人とも、さっきから何の話してるの??」