第103章 旅は道連れ
軽く触れるだけで離れていきそうになる信長の唇を、朱里は夢中で追いかける。
大胆にも首に腕を回して引き寄せて、自分から深く重ね合わせた。
「っ…くっ…朱里っ…?」
ちゅぷっちゅぷっと湿った水音を立て、拙いながらも角度を変えて何度も重ね合わせていると、信長の方からも濡れた舌先で唇の裏側を擽ってくる。
その舌遣いがひどく妖艶で、口付けだけで身体中蕩けさせられてしまいそうだった。
「んっ…信長さま…もっと…」
甘く強請りながら、朱里の手は信長の着物の内側へそっと潜り込む。袷を広げ、襟元を開く手はぎこちなかったが、その拙さが逆に信長の欲を煽る。
(たまにはこんな風に触れられるのも悪くないな)
自分からは手を出さず、されるがまま身を委ねていると、朱里の手は信長の着物の帯へとかかり、躊躇いがちに解き始める。
「どうした?今宵は随分と大胆だな」
「っ……」
帯を解くのに手間取りながら頬を朱に染めていく朱里が可愛くて堪らない。
信長は衝動の赴くままに朱里に口付けの雨を降らす。
額から目蓋へ、鼻先へ、頬へ、唇へと、小鳥が啄むような小さな口付けを幾重にも施していると、朱里の頬は益々赤く染まっていき、帯を解く手も止まりがちになる。
「くくっ…手が止まってるぞ。それではいつになっても解けぬな」
「っ…、も…意地悪しないで、信長さま」
「意地悪なのはどっちだ?そうやって俺を焦らしているのだろう?」
「んっ…違います、そんなつもりじゃなくて…私はただ、早く貴方のご無事をこの目で確かめたかっただけで…」
帯の結び目をモジモジと弄りながら視線を泳がせる愛らしい姿に、グッと欲が昂る。
「なるほど…俺の身体に怪我がないか、己の目で見て確かめたいということか?良いだろう、ならば余すところなく見せてやろう」
堂々と宣言した信長は、朱里に覆い被さっていた上半身を起こし馬乗りになったまま、緩みかけていた帯を勢いよく解くと、襦袢ごと一気に着物を脱ぎ落とした。
「っ…ひゃっ…」
鍛え抜かれた筋肉質な身体がいきなり目の前に曝け出されて、朱里は驚きのあまり目を逸らしてしまった。
逞しい胸板が間近に迫り、下帯一つ纏っただけの信長の下半身が己の腰を跨いでいるという、何とも目のやり場に困る光景に胸の鼓動がドキドキとうるさく騒ぐ。
(うっ…恥ずかしくて見れない…)