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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第103章 旅は道連れ


「さぁさぁ、どうぞ今宵も存分に楽しんで下さい!信長様、どうぞ一献!」

満面の笑みを浮かべる大名は、戦術の教授を受けて益々信長に心酔したらしく、頼もしい兄を慕う弟のように甲斐甲斐しく信長に酒をすすめていた。

その様子に心中些か辟易としながらも、信長はすすめられた酒を断ることなく盃を空ける。

今宵、広間で開かれている戦勝の宴では、皆が愉しげな笑い声を上げていたが、戦勝の立役者とも言える信長の表情は冴えなかった。
それというのも、上座に設けられた自分の席の隣にいるべき存在がそこになかったからである。

朱里は今宵、この宴の場にいなかった。


『三成、朱里はどうした?まだか?』

席に着き、朱里の姿がないことを三成に尋ねると、意外な答えが返ってきた。

『朱里様はご気分が優れぬそうで…今宵の宴にはお出になれぬとのことでした。信長様は、あの…ご存知ではなかったのですか?』

『気分が優れぬだと?どこか具合が悪いのか?俺は聞いてないぞ』

牢人達の討伐から戻った際に顔を見て以来、朱里とは会えず終いだった。
宴の開始までの間、ずっと大名の相手をしていた信長は、朱里に会いに部屋へ戻る間もなく、この場に来ていたのだ。

『そうですか…いえ、私も詳しいことは分からないのです。女中が伝言を頼まれたそうで…朱里様はお部屋でお休みのようです』

『具合が悪いのなら一人にしてはおけぬ。俺も部屋へ…』

『信長様、さぁどうぞ!間もなく始めますのでお席の方へ!』

迷うことなく踵を返しかけた信長を、大名の家臣達が引き止めてぐいぐいと席へと案内する。

『おい、待て、俺は…』


(結局強引に押し切られてしまったが…こんなところで悠長に酒を飲んでいる場合ではないというのに…朱里の具合が本当に酷く悪かったら何とするのだ!)

慣れぬ旅で早くも疲れが出たのか…戦に出た俺の心配をし過ぎて心労が祟ったのか……
よもや、昨夜ひどく苛め過ぎたせい…ではないだろうと思いたい。

次々と注がれる酒を無造作に干しながらも、信長は朱里のことが気になって仕方がなかった。
さすがに傍目に気付かれるほど動揺を見せたりはしないが、その心中は全く穏やかではなかった。

何とか早くこの宴を切り上げねばと、頭の中で考えるのはそればかりで、盃をいくら空けようとも、今宵は酒の味など皆目分からない信長であった。

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