第103章 旅は道連れ
その穏やかな笑顔を見て、不安に揺れていた私の心はすぅーっと落ち着きを取り戻していく。
信長様が『案ずるな』と仰るのなら、きっと大丈夫なのだと…無条件にそう思えるような気がした。
「この俺が牢人ごときに遅れを取ると思っているのか?そのようなこと…天地がひっくり返っても、ありえん」
「ふふっ…そうですね」
自信たっぷりに言い切る信長様は、頼もしくて格好良くて、こんなに切羽詰まった状況だというのに見惚れてしまうぐらいに素敵だった。
(信長様を信じて待っていよう。今、私にできることは信長様を信じることだ)
「ご無事のお帰りをお待ちしています」
「ああ」
信長は朱里の手を取ると、その指先にそっと唇を寄せる。
ちゅっちゅっと啄むように何度か唇をつけると、その手を自身の胸元へと導く。
手のひらからトクトクっと規則正しい心音を感じる。
信長様の生の証が力強く脈打つ音は、不安で揺らぎそうな私の心を安心させてくれる。
「信長様……」
「俺を信じて待っていろ」
力強く言うと、もう片方の手で私を抱き寄せて、強く抱き締めてくれた。