第103章 旅は道連れ
「おはようございます、朱里様。おや…何やらお疲れのような…昨夜はあまりお休みになれませんでしたか?」
朝餉の席で顔を合わせた三成くんは、朝の光に負けないぐらいに眩しい笑顔で私に笑いかけてくれる。
「えっ…いや、そんな…疲れてなんか…」
(やだ…顔に出てる!?どうしよう…信長様ったら、結局明け方近くまで寝かせてくれなかったから…っ…あんなに何度も…)
「そうですか?旅先だと環境が変わって眠れないこともあるそうですし、無理はなさらないで下さいね」
濃密な情事の記憶が思い起こされて身の奥を熱く火照らす私とは反対に、三成くんはどこまでも無邪気な笑顔で微笑み、私の体調を心配してくれる。
(ああ…なんて罪悪感…)
「おぅ、朱里、おはよう!何だぁ?疲れた顔して…さては、昨日は御館様に寝かせてもらえなかったかぁ?いやぁ、お熱いことで…」
「ち、違っ…慶次っ、そんな大きな声で言わないで…」
部屋中に響き渡るような快活な声で話しかけてくる慶次に慌ててしまい、思わずその袖を引いた。
「お、うおぉっ…」
私が予想外に勢いよく引っ張ってしまったせいか、慶次が油断していたせいなのか、体勢を崩した慶次はその場でよろめく。
「きゃっ…」
足元をふらつかせた慶次は、そのまま私に寄り掛かってきてしまい…気が付けばガバッと抱き締められていた。
「や、やだ…ちょっと、慶次…?」
「うおっ…悪い悪い…つーか、急に引っ張るなって…」
「ご、ごめん…」
「貴様ら…何をしておる?」
低く冷たい声はその場を一瞬で凍りつかせる。
「信長様っ…」
この城の大名とともに部屋へ入ってきた信長は、抱き合う朱里と慶次に冷ややかな視線を送る。
「御館様、おはようございます!」
信長の冷ややかな視線を気にする素振りもなく、慶次はさらりと自然な動きで私から離れると、常と変わらぬ笑顔で信長様に朝の挨拶をする。
「昨夜はよくお休みになれましたか?朱里は随分と寝不足みたいですけど…?」
「俺は常日頃よりさほど眠らん。こやつは夜更かしでもしていたのであろう?」
信長様はニッと悪戯っぽく口の端を上げながら、私の頬をするりと撫でる。
「っ…んっ…」
頬を撫でる指先は唇の上をつーっと滑っていき、その柔い刺激にすら淫らに感じてしまう。
(こんな人前で…そんな風に触れられたら…)