第102章 薫風に泳ぐ
「………寝たな」
「えっ、もう?(何て早業っ…さすが信長様…)」
先程までのはしゃぎっぷりが嘘のように、まるで呪文にかかったかの如くあっという間に眠りについた吉法師を、信長様はそおっと寝台に寝かせている。
あまりの素早い寝かしつけに、慌てて私も寝台の上を覗き込むが、吉法師はすぅすぅと可愛らしい寝息を立てていて、既に夢の中にいるようだった。
「信じられない…あんなにパッチリ目を開けてたのに。一体、どのようなまじないをお使いになったのですか??」
「くくっ…まじないなどと…訳の分からぬことを言うな」
「だ、だって、寝るの早過ぎっ…んっ…ひゃっ…」
不意打ちで、額にちゅっと口付けが降ってくる。
「やっ、な、何を…」
「んー?子が寝たのだから、ここからは大人の時間に決まっておる。貴様はすぐには寝かさんぞ?」
「えっ、えええっ…」
驚いている間に軽々と抱き上げられて、寝台へと運ばれる。
壊れ物を扱うような慎重さで降ろされると、信長様はすぐに私の身体に覆い被さってきた。
「んっ…やっ…待って…ンンッ!」
チュウっと強く首筋に吸い付かれたかと思うと、シュルリと腰紐が解かれる音がして夜着の袷が緩む。
(は、早っ…)
覆い被さる信長様の重みと、早くも夜着の上から身体を弄り出した熱い手のひらの感触に身体の奥がゾワゾワと震え始める。
夜着の前を開くと、たわわな乳房が溢れ出る。
陶器のように透き通った真っ白な肌と、その中心でぷっくりと膨らんだ赤い実が男の欲情を誘う。
早く触れたい…そう思いながらも信長は、露わになった朱里の美しい裸体をじっくりと視覚で堪能する。
「やっ…あっ…見ないでぇ…」
捕らえた獲物を嬲る猛々しい獣のような信長の深紅の瞳は、燃えるような情欲を溢れさせていて、見られているだけでひどく感じてしまう。
早く触れて欲しい…焦らされる苦しさに身悶えながら、朱里は信長の深紅の瞳を見つめ返す。
「っ…くっ…そんな目で見るな。抑えが効かんっ…滅茶苦茶に抱いてしまいたくなるっ…」
悩ましげに言うと、朱里の首筋に顔を埋めて、はぁ…っと熱い吐息を吐き出す。
「あ、んっ…やっ…はぁ…」