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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第102章 薫風に泳ぐ


(お菓子を買うだけだし、ちょっとぐらいならいいよね…)

心の中で自分に言い聞かせて、茶屋の暖簾を潜る。


「あれ?朱里さん?」

「えっ?あっ、ええっ? さ、佐助くん?」

暖簾を潜った拍子に、入り口に近い席に座っていた人物からいきなり声を掛けられて慌てて顔を上げると……常連客のようにゆったりと寛いで茶を啜っている佐助くんがいた。

「久しぶり」

「あ、うん、久しぶり…って、何で??どうしたの?また何で大坂にいるの?」

「落ち着いて、朱里さん。あ、ここ、よかったらどうぞ座って」

相変わらずの無表情で席を勧められ、戸惑いながらも佐助くんの向かいの席に座る。

「そういえば、今日は一人なの?朱里さん、信長公が一緒じゃないと外出できないんじゃなかったっけ?」

キョロキョロと周りを見回しながら、佐助くんの眼鏡の奥の瞳がキラリと光る。

「あ、それはその…色々事情が変わりまして…」

取り敢えずお茶を注文してから、織田の領地に学問所を建てていることと、私が城下の学問所の手伝いに通ってることを佐助くんに話す。

「へぇ…領内全てに学問所を作る計画なんだ。朱里さんはすごいことを考えるね。兼続さんが聞いたら興味津々だろうな。
あ、兼続さんっていうのは上杉の軍師で、謙信様の右腕って言われてる人だけど」

「謙信様の…そうなんだ。お会いしてみたいな。でも、私は自分がやりたいと思ったことを信長様にお願いしただけだから…願いを形にして下さったのは信長様なの」

「さすがは信長公。新しいものを取り入れる決断力は、やっぱり戦国一だな。でも、その学問所のおかげで、今日また朱里さんに会えたわけだね」

「ふふ…そうだね。佐助くんは城下で何を?今日は一人なの?」

「俺は謙信様のお遣いで京へ行った帰りなんだ。朱里さんに渡したいものがあって…明日にでも大坂城へ伺おうと思ってたんだけど」

「えっ、そうなの?」
(何だろう、渡したいものって…?)

「うん、明日お城へ持って行くよ」

「あ、うん…えっと…あの、もしかして天井裏から?」

「そう」

佐助くんは事も無げに言うけれど…大丈夫だろうか?
織田家と上杉家は同盟関係とはいえ、天井裏からの訪問ってどうなのだろうか…いや、そもそも城門から堂々と入ってきたとしても、信長様に知られたらどうなることか……心配しかない。


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