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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第100章 君に詠む


「くくっ…貴様、本当に覗き見する気だったのか?随分と余裕ではないか」

「えっ…ち、違いますよ…さっきから緊張してて、もう気が気じゃないんですってば!」

ニヤニヤと意地悪に笑みながら私の顔を覗き込んでくる信長様に必死で訴える。

「そうなのか?てっきり輿の中で退屈して外を見たくなったのかと思ったが…違ったか?」

「うっ…退屈したわけじゃ…」

「ふーん?ならば、何が見たかったのだ?気になる、教えろ」

信長様はゆったりと馬を歩ませながら、私を揶揄うように問う。
その顔は子供みたいにひどく愉しげで、見ていると緊張していた私の心も柔らかく解けていくような気がした。

信長様はいつもこんな風にさり気なく私に話しかけてくれて…そういうひと時がいつも私を落ち着かせてくれるのだ。

「ふふ…内緒です。でも、ありがとうございます。信長様のおかげで少し緊張が解れました」

「……は?貴様の言うことは何だかよく分からんが…案ずるな、貴様には俺がついている。何があろうと必ず守る」

揶揄うような笑みを浮かべていた信長様の顔が、一転して真剣なものに変わる。
私の不安な気持ちを打ち消すように、キッパリと『守る』と言い切ってくれる信長様の言葉がじんわりと胸に染みる。

(そうだ、信長様はいつだって私の傍にいて、私を守ってくれる。信長様の隣にいれば、きっと大丈夫。私も…守られているだけじゃなくて信長様をお支えしなくては…)

公家衆と信長様の関係性がどのようなものであるかは、私には正直分からない。
信長様は何度も上洛され、帝からの信頼も厚い。官位こそ辞退されてはいるものの、そのお立場は朝廷内でも揺るぎないものだ。
朝廷の政は、信長様の意向に左右されると言っても過言ではない。
今や、信長様の後ろ盾なしには朝廷の政は立ち行かないからだ。

だが…そのことを本音を隠すのが上手な公家衆が、実際のところどのように思っているかは分からない。
表向きは信長様におもねる態度を取りながらも、心の内では高い身分の出自ではない織田家を低く見ているのかも知れなかった。

信長様の正室として、身分不相応にも関わらず例外的に御所に上がることを許された私のこともどう思っているのか…分からない。

(決して侮られてはいけない。少しも気を抜けないわ…信長様の妻として、恥ずかしい振る舞いはできないのだから……)


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