第19章 金平糖を奪還せよ
(あぁ、びっくりした…
でも針子さん達が私をどう思ってくれてるかが分かって、ちょっと嬉しかったな…)
「おい、朱里、首尾は如何であった?」
庭に面した柱にもたれて待っていた信長様に声を掛けられて、ハッと我に帰る。
(いけない、金平糖捜索指令の最中だったっけ………)
「………顔が赤いな、熱でもあるのか?」
言いながら、さり気なく私の頬に手を伸ばし、優しい手付きでそっと触れてくださる。
「だ、大丈夫です…」
信長様は私の頬を両手で包むと、コツンと額を合わせてくる。
(わっ、近すぎるっ。
……長い睫毛、高い鼻梁…近くで見れば見るほど綺麗で見惚れちゃう)
「っ、本当に大丈夫ですからっ。
それより、針子部屋にも金平糖はないみたいです。針子さん達も秀吉さんに何も頼まれてない、って言ってましたよ」
「城内くまなく探したのに、見つからぬとは……
くっ、秀吉め、やってくれるわ」
「う〜ん、秀吉さんの御殿にあるとか?それだと、探すのが難しくなりますね………」
結局その日は他に隠し場所も思い当たらず、私達はそれぞれの部屋へ戻ることとなった……