第99章 新たな出逢い
(信玄様と佐助くん達は知り合いなのか…でも、私に会うためだけに、わざわざ甲斐から信玄様を呼んでしまうなんて、どういう関係なんだろう)
「あの、信玄様と佐助くん達はどういうお知り合いなのですか?佐助くんの主君だという、あの二色の瞳の男性は…誰なのですか?」
「それは、俺の口からは言わないでおこう。さぁ、行こうか」
信玄様はニッコリと柔らかく微笑むと、流れるような所作で私の手を取った。
そのまま自然な感じで歩き始めた信玄様に、私はそれ以上何も聞けずに黙ってついて行くしかなかった。
「朱里さんっ!」
茶屋の看板が見えてきたと同時に、見知った顔が見えて、思わず足を止める。
「佐助くんっ!」
佐助くんは足早に私達に近寄ると、信玄様に向かって深々と頭を下げた。
「ありがとうございます、信玄様。おかげで、もう一度朱里さんに会うことができました」
「お安い御用さ、これぐらい。俺も逢いたかったしな。それにしても、佐助をもってしても、度々忍び込むのは至難の業だったか、あの城は?」
「いえ、忍び込むのは可能です。大坂城の天井裏はほぼ把握できましたから。しかし、朱里さんを連れ出すのは難しかった。信長公の監視の目が予想以上に厳しくて…」
「なるほどな。自由に外出もできないとは…朱里、君も大変だな」
「お前は信長によってそれほどに不自由を強いられているのか?許しがたいな」
いつの間にか佐助くんの隣には、あの二色の瞳の男性が立っていて憤慨したように眉を顰めていた。
「ええっ…いえ、そんな…そんなことはないです。信長様はお優しい御方で、私はすごく大事にされてて…一人で外出するのを許して下さらないのは、私の身を案じて下さっているからで……私、不自由だなどとは思ってません!」
信長様が非難されるのが耐えられなくて、慌てて声を上げた私を信玄様たちは驚いたように見る。
「信長様は悪くないのです。私が正直に事情を話していれば、佐助くん達に会うことも許して下さっただろうと……思います。
でも私、どうしても言えなくて……信長様に余計な心配かけたくなかったから……」
「君はどこまでも純粋だな。だが、人を疑うことを知らない心根の美しい天女は、男心には少々疎いみたいだ」
「えっ…それはどういう…」
「まあまあ、立ち話もなんですから皆さん、お茶にしましょうか」