第19章 金平糖を奪還せよ
「…皆さん、失礼致します」
針子部屋の襖をそっと開けて、中の様子を窺う。
初めて入るその部屋は、色とりどりの布に溢れていて、数人の針子さん達が忙しそうに着物の仕立てをしていた。
「…まぁ、朱里様っ!如何なさいました?
このようなところにお越しになるなど…仕立てに何かございましたか??」
針子さん達の明らかに慌てた様子に、申し訳なさが募る。
(う〜ん、気使わせちゃってるなぁ…
でも、信長様からの指令をやり遂げないとっ)
「す、すみませんっ。いつも素敵な着物を作って頂き、ありがとうございます。
あの、今日はちょっと聞きたいことがあって…」
「まぁ、姫様にお礼を言われるなんて、勿体のうございます。
何をお聞きになりたいのでございますか?」
「えっと、皆さん…秀吉さんから何か預かってませんか??」
「は?秀吉様から、ですか?
仕立てのご依頼は頂いておりませんが…」
「あっ、いえ、仕立ての件ではなくて。……小瓶、とか?」
「小瓶、ですか??いいえ、秀吉様からは何もお預かりしておりませんよ。ねえ、みんな?」
針子さん達は皆、一様に頷いている。嘘をついているようには見えない。
(ここにもないか…う〜ん、秀吉さん、どこに隠したんだろ??)
お礼を言って部屋を出て行こうとすると、話を聞いてくれていた針子さんに呼び止められる。
「あ、あの、朱里様…仕立てのことでご提案があるのですが…」
「…はい、何でしょう?
皆さんが仕立ててくださるお着物、私、とっても気に入ってるんです!」
「ありがとうございます!
実は………………」