第99章 新たな出逢い
「ええっと…落ち着いて、朱里さん。同盟相手とはいえ、この状況を見つかると、俺もさすがにまずいので」
「……は?同盟……?」
「いや、それはこっちの話。気にしないで。ところで、俺の上司が君にもう一度逢いたがってるんだ。もちろん俺も逢いたかった。
だから……一緒に来て欲しい」
「………ええっ!?」
「大坂城の警備はさすがに厳重だったけど…君を連れて出るぐらいどうってことはない。大丈夫、俺はちょっとすごい忍者だから」
「なっ……」
(いやいや、そういう問題じゃないってば!)
「無理だよ、行けないよ!だって私は……」
「信長公の奥方様、なんだよね、朱里さんは」
「!?佐助くん……知ってたの?」
あっさりと言い当てられてしまい、驚きを隠せないが、奥御殿のこの部屋にいきなり忍び込んでくるぐらいだから、私の素性が既に知られていても当然かもしれなかった。
「茶屋のご主人から、偶然聞いたんだ。でも……誤解しないで欲しい。君が信長公の奥方だから連れ出したいわけじゃない。俺達はもう一度、城下で君と楽しい時間を過ごしたいだけだよ」
「佐助くん…貴方と、貴方の主は…何者なの?私に逢うためだけに城へ忍び込むなんて…」
只者ではない雰囲気は感じていたが、この城に忍び込めるなど、佐助くんは余程のすごい忍者なんだろうと思われる。
そんな佐助くんの主である、あの二色の瞳の男性も、相当に腕の立つ武将だった。
「っ…朱里さん、それは……」
佐助くんが言い淀んだその時、ドンドンっという力強い足音が部屋の外から聞こえてきた。
聞き覚えのあるこの足音は……
(この足音は…信長様だっ!まずい…さ、佐助くんっ…)
「さ、さすっ…」
「朱里っ、入るぞ」
「っ…ひゃっ…!」
「…………おい、貴様、何のつもりだ?」
佐助くんを隠そうと咄嗟に腕を広げて立ち塞がった私を、信長様は眉を顰めて怪訝な表情で見た。
「信長様っ…あ、あの、これはその…」
「一人で何を遊んでる?あぁ、そうか…俺を出迎えて…いいぞ、抱き着いても」
「…へ?」
「全く…そんなに腕を広げて待ち構えているとは、可愛いやつめ。ほら、早く来い。二人だけだ、誰も見ておらん」
「えっ、ええっ…(二人だけ?誰も、って…佐助くんは…?)」
何となく嬉しそうな信長様の様子に戸惑いながらも、チラリと背後を窺うが…………