第19章 金平糖を奪還せよ
「……信長様、金平糖食べ過ぎちゃったんですか?」
天主に上がってようやく腕を離してもらった私は、文机の前で未だ不機嫌そうにしている信長様に問いかけた。
「………常よりも若干多く食べただけだ。
好きなものを好きなだけ食して何が悪い。
それが大人の醍醐味というものだ」
(っ、いや、それ、子どもと一緒ですからっ!)
「………まぁ、秀吉の言い分も分からんではないが…
俺から金平糖を取り上げることは許せんっ。
朱里、秀吉から金平糖を取り返すぞ。貴様も手伝え」
「ええっ?どうするんですか??」
「彼奴はまた城内のどこかに金平糖を隠すはずだ。
だから…その隠し場所を突きとめるぞ。
そうだな…まずはいつもの厨からだな」
信長様は真剣そのもの、軍師さながらの表情で一人頷いている。
(ふふっ、信長様の真剣なお顔、子供みたいで可愛い)
(秀吉さんの信長様を心配する気持ちも分かるけど、信長様、このところお忙しくてお疲れだったから、金平糖の消費量が増えても仕方ないよね………)
(ごめんね、秀吉さん。私、信長様に協力します!)