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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第97章 愛とは奪うもの勿れ


その日の夜

「あぁ、もうっ!苛々するわ!何なのよ、私を軽く見て…私は摂政の娘なのよっ!信長様の正室とはいえ、北条家の姫なんて田舎大名の娘じゃないの!身分は私の方が上なのよ、それなのに…」

昼間の信長と朱里の仲睦まじい様子を思い出して腹立ちが収まらない綾姫は、眠れずに苛々していた。

京からの大事な客人のはずの自分が、この城では一向に尊重されない由々しき事態、信長の素っ気ない態度、京とは違う住環境、など諸々のことが重なって心が乱れ、横になってもなかなか寝付けなかった。

「はぁ…眠れないわ。喉、渇いたわね…」

お付きの侍女に白湯を持ってくるように頼もうと起き上がるが、あいにく皆、下がってしまった後であり、枕元に水差しもない。

(もぅ!気が利かないんだからっ…)

仕方なく自分で厨へ行くことにする。

(昼間のうちに城内を案内してもらっててよかったわ)

あの後朱里は、綾姫に城内を案内してあげるよう、秘かに三成にお願いをしていたのだ。
自分が頼んだと分かると綾姫が気を悪くするといけないと思い、綾姫には信長様からの心遣いだと言ってもらうように三成には頼んでいた。
三成ならば綾姫の機嫌を損ねることなく丁寧に対応してくれるだろうと考えてのことだった。


(本当は信長様に案内していただきたかったけど…石田様は物腰も柔らかくて丁寧だったから、まぁ、いいわ)

三成の天使のような笑顔を思い浮かべて口元を緩めながら、綾姫は所々に行灯が灯る薄暗い廊下を歩いていく。
大坂城は想像していた以上に広くて部屋数も多く、油断すると迷ってしまいそうだった。

この時間になると、皆、寝静まり、物音もしない。
自らの衣擦れの音も気になるほどの静けさに、息を詰めて歩いていると………


「ぁっ…んっ…やっ…はぁ…」

(……えっ?)

「ひっ…ああっ…はっ…ンンッ、信長さまっ…待っ…」

声を押し殺した苦しげな女の声に混じって、衣が擦れるような微かな音が聞こえる。

静かな廊下に突如聞こえてきた艶めかしい音に、ぎょっとして音のする方を見ると、廊下の先に薄らと灯りの漏れる部屋があった。

(っ…あの部屋から…?信長様、って聞こえたわ…)

足音を立てぬよう、そおっと廊下を滑るようにして、その部屋の前まで進む。
覗き見など、はしたないと思いながらも、湧き上がる好奇心に抗うこともできず……



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