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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第97章 愛とは奪うもの勿れ


それでも、言い出したら聞かないのが信長だ。
口を開けるまで、きっと許してくれないだろう。

仕方なく、恥ずかしいのを我慢し、綾姫からの突き刺さるような痛い視線に耐えながら小さく口を開くと、しっとりと蜂蜜の染み込んだ生地が口の中に優しく入れられる。

(わっ…ふわっふわだけど、蜂蜜がじゅわってして…甘い!)

砂糖も蜂蜜も、信長様が取り寄せてくれた上等なものを使っているからか、甘いが、くどくなく、何口でも食べられそうな感じだ。
生地が焼き上がった状態では味見をしていたのだが、たっぷりの蜂蜜がかかると、また一味も二味も違っていた。

(信長様には、蜂蜜かけ過ぎですって言っちゃったけど、これはアリかも…うん、我ながら上手く作れたな)

思わず緩んでしまった私の頬を、信長様は指先でチョンっと突っつく。

「ふっ…貴様、そんな幸せそうな顔をしおって」

「っ…あっ…」
(そうだ、綾姫様の前だったのに…)

熱くなる頬を両手で押さえながら、ハッと気が付いて恐る恐る様子を窺うと、ふるふると肩を震わせながら苦虫を噛み潰したように顔を顰める綾姫の姿が目に入る。

「あ、あの…綾姫様…?」

「っ……私、失礼しますわっ!」

持ってきたお茶を脇机の上にドンッと荒っぽく置くと、朱里をキッと睨んでから出ていってしまった。

「あぁ……」
(どうしよう…機嫌悪くさせちゃった。それでなくても疎ましく思われているだろうに…)

正室である自分が良く思われていないだろうことは自覚していた。
仲良くなれるとも思っていなかった。
信長を誰にも奪われたくないという強い思いを持ちながらも、綾姫を傷つけたくないという矛盾した思いもあって……朱里の気持ちは複雑に揺れていた。

「貴様が気に病むことはない」

朱里の髪を優しく梳きながら、信長は宥めるように言う。

「っ…でもっ…誰も傷つけたくはないのです。綾姫様は信長様のこと…好いておられるようですし…」

朱里の言葉を聞き咎めるように信長は眉を顰める。

「ならば貴様は…側室を受け入れるのか?あの姫に俺をやるとでも言うつもりか?」

「そんなことっ…嫌っ…絶対にイヤっ!そんなことを仰る信長様はもっとイヤですっ!」

ふるふると髪を振り乱して絞り出すように拒絶の言葉を溢す朱里を見て、信長は胸の奥が、かあっと熱くなる。



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