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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第95章 雪の日に


(秀吉が寝込んでいるだと…?全く…彼奴らしくもない)

朝餉の後、秀吉への見舞いの品を手配すべく急ぎ足で立ち去る朱里の背を無言で見送った信長は、一人、執務室へと足を向ける。

年の瀬まであと数日、片付けねばならない政務が溜まっていた。
年越しといっても日が変わるだけ、目に見えるものが特別変わることなどないとは思いつつも、やはり、やるべき事はやってから新しい年を迎えたいという気持ちは、信長にも少なからずあったのだ。

今日明日のうちには、秀吉と共に片付けるつもりでいた。

(『昨夜は遅くまで報告書の整理をしていた』と三成は言っていたが…俺に黙って無理をしおって…)

彼奴なりの俺への気遣いなのだろうが…どうにもモヤモヤしてしまう。
日頃、口煩く叱言を言い、俺の自由を何かと制限しがちな男だが…傍らに居らぬとなると、これが何とも落ち着かないのだ。



執務室に入ると、文机の上に山積みになっている報告書を手に取って目を通していく。次々に片付けていくうちに信長は、はたと気が付いた。

なるほど整理されていて分かりやすくなっている。
山のように積まれた大量の報告書は、一見雑多に積まれているように見えるが、よく見ると内容ごとに分類されて置かれていた。
更には、急を要する決裁がいるものについては、手前に置いてあるという丁寧さだ。
しかも、信長が見やすいよう、重要な箇所には印が付けられている。
秀吉が昨日のうちに目を通し、予め準備したのだろう。



秀吉によって分かりやすく整理されていたおかげで、報告書はあっさりと片付いた。
続けて、信長は文をいくつか認める。
それは京や堺に駐在する家臣達への指示であったり、尾張や美濃の家老達への労いであったりと、様々な方面へ気を配るものだった。

何通も書いているうち、次第に墨が乾き始める。

「おい秀吉、墨を磨れ」

いつものように口にしてから、ハッと気が付いて顔を上げる。
当然のように返事はなく、シンっと静まり返った執務室の空気に決まりの悪さを感じた信長は、口元に何とも言えない苦笑いを浮かべる。

いつもなら、鬱陶しいぐらいに世話を焼かれて辟易するほどなのに……

(全く…この俺の傍を離れるなど…秀吉にあるまじき失態だぞ)



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