第95章 雪の日に
真っ白な白銀の世界
見渡せばどこまでも広がる雪原は、何人に踏み込まれるのも拒絶するかの如く、遥か遠くまで真っ直ぐに広がっていた。
昼近くになり、太陽は空の高いところまで上がっており、雪原は陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。
未だ人に踏み荒らされていない純白の世界は圧巻だった。
「はぁ…なんで俺がこんなことを…まったく、あの人の考えることはいつも突拍子もないんだから…」
「まぁ、そう言うな、家康。雪合戦なんて、面白そうじゃねぇか」
「どこがですか?政宗さん。この寒い中、いい大人が集まって雪遊びなんて…子供じゃないんだから」
「子供の遊びとはいえ、戦は戦。しっかりと策を立て、挑まなくてはなりませんね」
「おっ、頼もしいな、三成。こっちには織田軍きっての軍師がいるんだ、勝利は貰ったも同然だな」
「くくっ…戦は最後まで勝敗は分からぬものだぞ、政宗。騙し討ち、奇襲の類いもありだからな。油断は禁物だ」
「光秀、お前…またよからぬことを考えてるんじゃないだろうな…御館様はもちろんのこと、朱里や結華が危ない目に遭うような真似は御法度だからな」
「分かっているとも。なに、雪玉を投げ合うだけだ、危ないことなどないはずだが?」
「ちっ、お前のその言い様は信用ならねぇ。あぁ…よりによって、なんで俺は御館様の軍じゃないんだ…誰の策謀だ、これはっ」
「いや、くじ引き、作ったの…秀吉さんでしたよね?」
家康が呆れ気味に冷ややかな視線を秀吉に向ける。
「くっ…それはそうだが、右腕たるこの俺が御館様に対して雪玉を投げるなど、そのような畏れ多いこと…考えられん」
「やかましいぞ、秀吉。これは真剣勝負だ。手加減などしたら、どうなるか分かっているだろうな?」
「御館様っ!」
信長にジロリと睨まれて悲痛な声を上げる秀吉を見て、他の武将達は苦笑いを浮かべている。
朱里の発案により、城下の外れの平原にて急遽行われることになった雪合戦。
信長の召集により集まった武将達は、東軍と西軍の二組に分けられた。
東軍は、信長、光秀、家康、大将は朱里
西軍は、秀吉、政宗、三成、大将は結華
「……信長様、何故、私と結華が大将なのですか?指揮を取るなら、信長様が適任ですよね??」
「ん?」