第94章 聖なる夜の願い事
(随分と大胆に絡めてくるな…くっ、煽ってくれるっ…)
「んっ…ふぅ…はぁ…」
くちゅくちゅっと舌が絡み合う湿った水音とともに、乱れた吐息を溢す朱里の声に煽られて身体がかぁっと熱くなる。
先程まで冷え切っていた寝所の空気が、一気に温度を上げたようだった。
「っ…朱里っ、はっ…」
「あっ、んっ…苦しっ、もっ…待って…」
後ろ頭をぐっと押さえ、角度を変えて深く奥まで求める信長に必死に答えながらも、隙間なく重ねられて息苦しいぐらいの口付けにクッタリと身体の力が抜けてしまうようだった。
口付けだけでぐずぐずに蕩けさせられた私は、縋りつくように信長様の首に腕を回す。
目覚めたばかりだというのに…はしたなくも身体は口付けのその先を期待してしまっていた。
ーちゅっ…
「あ……やっ、あっ……」
激しく貪られたのが嘘のように、突如あっさりと離れていってしまった信長の唇に、胸がツキっとした痛みを覚える。
(んっ…もう、おしまい…?)
「……そんな物欲しげな顔をするな。今朝はここまでだ」
ニッと口元に意地悪な笑みを浮かべる信長を、つい恨めしげな目で見つめてしまう。
口付けだけでひどく気持ちが昂ってしまった己の身が悩ましい。
もっと欲しい、もっと…と、疼く身の内の熱を持て余し、堪らず信長の胸元へ顔を埋め、ぎゅっと抱きついた。
「信長様っ…好き…」
「貴様っ…今朝はやけに素直だな。悪くないが…まもなく夜が明ける。今日は『イエスの降誕祭』とやらの日だろう?城内でも朝から色々と準備をすると言っていたな?このまま…起き上がれなくなってもいいのか?」
頭の上に唇を寄せ、髪に柔く口付けながら言う。
その言葉も、髪の上を滑る唇の感触も、腰にさりげなく回された腕も、全てが甘やかで優しかった。
「案ずるな、この続きは今宵、してやる。一晩かけて、朝までじっくりとな…」
「あっ、んっ…そんなっ…」
耳元で妖艶に囁く声に、身の奥が甘い期待をしてジュクッと濡れたのが分かる。
(んっ…夜までなんて待てないのに…このまま起きられなくなってもいい…なんて、そんなこと恥ずかしくて言えない)