第93章 緋色の恋情
今にも崩れ落ちそうな朱里の身体を支えながら、信長はこれはどこかおかしい、と感じ始めていた。
(最初は体調が悪いのかと思ったが…これはどうも違うようだ)
熱っぽく火照った身体
無意識に漏れる悩ましい吐息
男の欲を煽るような艶めかしい喘ぎ声
それらはまるで、媚薬に侵されたかのようで……
(媚薬…いや、しかし…俺が見ていた限りでは、特におかしなものは口にしてなかったはずだが…)
夕餉の膳は、山菜を中心とした素朴なものだった。
紅葉の天ぷらや、キノコづくしの料理。信長も同じ内容の膳だったはずだ。
宿の主人が故意に一服盛るとは考えにくい。
ならば、使われた食材に予期せぬ問題があったか……
(おかしな食材などあっただろうか…朱里が特に好んで食べたものといえば、キノコ料理だが…キノコ?いや、まさか…)
山で採れるキノコの中には毒ではないが、催淫効果があるものが存在すると聞いたことがある。
男が食えば精力増強、一晩中昂りが収まらず、女が食えば淫らに蜜が溢れて止まないという…嘘か誠か、そんな噂を聞いた。
今宵の料理の中には、見たこともない種類のキノコも入っていたように思う。
もしその中に、媚薬に似た成分を持つキノコが混ざっていたとしたら…
「うっ…あっ、んっ…はぁ…信長さまっ…わたし、変なの…あっ、はぁ…んっ…身体が…っふっ…うっ、熱くって…あっ…おかしくなっちゃっ…あ、はぁ…」
「くっ……」
はぁはぁと荒く息を吐きながら、朱里は瞳を潤ませて信長の腕に縋る。
身体の奥が疼いて堪らないのだろうか、夜着の裾がはだけるのも厭わず大胆に足を擦り寄せて身を捩っている。
「あああっ…ンッ…んんっ…」
(くっ、これは…堪らんな。見ているこちらがどうにかなりそうだ)
「朱里…苦しいのか?」
虚ろな目をする朱里を腕の中に横抱きにして、耳元で囁く。
吐息とともに甘い声音を注ぎ、柔らかな耳朶をそっと喰む。
「やっ、いゃぁ…ンッ…いい…耳っ…気持ちイっ…ふぁ…」
「ぐっ…あっ…」
快楽にあまりにも正直な朱里の反応に、信長の下半身も否応なく反応する。
ググッと反り上がった一物が夜着の前を押し上げて、朱里の腰の辺りに触れる。そのまま腰をずらすと、意図せず尻の割れ目の辺りに当たったようだ。
「ああっんっ…硬いの…信長さまの、ぐりぐりして…んっ…感じちゃ…うぅ…」