第93章 緋色の恋情
夕餉の後、子供達を寝かしつけてから、私と信長様は縁側に出て、灯りに照らされた庭の紅葉を見ていた。
行灯の柔らかな灯りに照らされて、宵闇のなかに浮かぶ真っ赤な紅葉は幻想的でこの上なく美しい。
夜の紅葉には、昼間の燃えるような赤とはまた違う美しさがあった。
「寒くはないか?」
隣に並んで寄り添って座りながら、信長は朱里を気遣うように声をかける。
宵の紅葉は美しく、いつまでも目が離せずにいたが、夜になると流石に肌寒さを感じる季節になっていた。
「っ…大丈夫です」
大丈夫…そう答えながらも、朱里はどことなく身体の違和感を感じていた。
夕餉が終わって子供らを寝かしつけている時には何ともなかったのに、どうしたことか身体が熱いのだ。
最初は気のせいかと思っていたのだが、火照ったように身体がどんどん熱くなってくる。
(っ…おかしいな、熱でもあるのかしら…でも、これはちょっと違うような…)
風邪を引いたのなら寒気を感じるはずだが、そういうことはなく、寧ろ……身体の奥が熱くて堪らないのだ。
「んっ…はぁぁ…」
息苦しさから、思わず声が出てしまい、喘ぎにも似たその声音に自分でも驚く。
「っ……」
信長が驚いたように息を飲む気配に、慌てて口元を手で押さえた。
(やだっ、変な声出ちゃった…私、何で……)
「朱里、貴様どうしたのだ…っ…おい!?」
「んっ…あっ…ンッ…」
案じるようにそっと肩に置かれた信長の手の感触に、身の内がゾクリと震える。
ジュクッと甘い疼きが背を駆け上がり、息が詰まって心の臓がばくばくと激しく脈打った。
(な、何っ…なんなの、これ…)
「んっ…信長さまっ…」
思わず信長の方へしなだれかかってしまい、身体が触れた途端にまたビクッと震えてしまう。
呼吸が乱れて上手く声が出てこず、僅かに口から漏れるのは自分でも信じられないような、艶めかしい喘ぎ声だった。
「やっ、あっ…んっ…」
「っ…貴様っ…どこか具合が悪いのか?熱でも…」