第93章 緋色の恋情
案内された部屋は広く、一部が庭に面しているようで、障子を開け放つと、美しく整えられた庭が目に飛び込んでくる。
庭石に苔が生す落ち着いた雰囲気の中に真っ赤な紅葉が目にも鮮やかな、趣のある庭園だった。
「わぁ…部屋からも紅葉が見られるのですね!」
「陽が落ちれば、庭の行灯に灯りが入る。灯りの下に浮かび上がる紅葉はさぞ美しかろう。
朱里、結華と一緒に先に湯に浸かって来い。吉法師は俺が見ておいてやる」
「えっ、でも…信長様の方がお疲れでしょう?お先にどうぞ」
「俺は後で構わん。気にせずゆっくりしてくるがよい」
吉法師をさっと抱き取ると、信長は座って膝の上であやし始める。
「あ、あの……」
「ん?ほら、さっさと行ってこい。それとも…俺と一緒に入りたいのか?」
「やっ…そんなっ…」
ニヤリと悪戯っぽい笑みを見せられて、思わず焦ってしまう。
「くくっ…この宿の湯は露天風呂だ。湯に浸かりながら見る紅葉と貴様の火照った肌と…どちらがより色鮮やかであろうな?」
「なっ……」
(なんてこと仰るの!?結華に聞かれてない?信長様と一緒に露天風呂って…それは恥ずかし過ぎるっ…)
「さ、先に入ってきますっ!」
いきなりの艶っぽい発言にヒヤヒヤしてしまった私は、結華を連れて急いで部屋を出たのだった。