第17章 戦場
「…秀吉、いちいち煩い。
が、留守居ご苦労だった。此度は心配をかけたな」
「めっ、滅相もございませんっ。有り難きお言葉っ」
「早速だが、着替えたら軍議を行う。支度をしておけ」
「はっ、畏まりましたっ」
朱里を伴って城内へと入っていく御館様を見送る。
時折楽しそうに笑い合ったり、触れ合ったり、と仲睦まじいご様子に、自然と口許が緩む。
微笑ましい気持ちで兵達を迎え入れていると、政宗と家康の姿を見つけ、声をかける。
「政宗、家康、ご苦労だったな。無事でよかった」
「おう、秀吉、出迎えご苦労。
つーか、大変だったんだぞっ、信長様が」
「へ?御館様はお元気そうだったぞ。さっき、ご機嫌で朱里と一緒に城内に入られた」
「帰還する途上、京を通り過ぎようとしたら、公家連中が待ち構えててさ、戦勝の祝いだ、挨拶だなんだと、ひっきりなしにやってきて足止め食っちまって…
何とか強引に振り切ったんだが、信長様の機嫌が最高に悪くなっちまってさ…
安土に着くまで一言も喋らないし、不機嫌そうな顔がものすごい威圧感で兵は怯えるし」
「あんなイライラした信長様、初めて見ました。
まぁ、朱里の顔見たら一瞬で機嫌治りましたけど…
安土に着くまでほんと最悪の状態だったんですよ」
「そうだったのか…公家たちは御館様の機嫌を取りたいんだろうけど、御館様は回りくどいことは大嫌いだからな」
加えて今回は、早くご帰還なされたかっただろうしな、と先程の朱里との仲睦まじい様子を思い出して信長の心情を思い遣る。
(御館様は変わられたな…よい意味で人間臭くなられた)